ラヴニカのギルド スタンダード調整録 後編

後編です

多分前編読んでからの方が良いと思います

 

 

どうしてもプロツアーの前にあげたいので急いで書きます

 

プロツアーが始まる前に書き上げて、プロツアーを見て、そして僕らがどれだけ的外れな事をやっていたのか、また正しかったのかを確かめたいのです

 

 

 

 

まずはスタンダードの展望から

現在のスタンダードには特に強力なデッキが4つある

ゴルガリミッドレンジ

ボロスエンジェル

青赤フェニックス

ジェスカイコントロール

この4つはリストの完成度、デッキパワーを鑑みて抜けた4つだと思う

Tier2には青黒系、セレズニア、赤単、青単、などが横並びに

プロツアーはこの4つを中心にメタゲームが展開されるのではないだろうか

 

 

中でもゴルガリはデッキの軸が太く、あらゆる状況に対応できるとあってプロが好みそう

ミラーで自信を持てるならゴルガリを持ち込むプロは多いと予想

 

ボロスエンジェルはゴルガリが台頭してきた頃には厳しいポジションだったが、メインからトカートリの儀仗兵、再燃するフェニックスを採用することでゴルガリへの耐性を得た

生物の質は環境屈指

 

青赤フェニックスはゴルガリに強いというだけで存在価値がある

一時期は苛烈な対策に苦しんだが、また勢いを取り戻してきた

最近はゴブリンを抜いて最大速度を採用した形が増えてきた

孤光のフェニックスの粘り強い攻めとドレイク+最大速度のワンショットのふたつの軸で相手に迫る

 

ジェスカイコントロールは上記のあらゆるデッキに対して優位に立てる

特にアゾールの門口型は従来の”勝つまでに時間がかかる”という弱点を見事に克服しており期待がかかる

何もかもテフェリーが悪い

 

(毎度プロツアーでよく見られるプロ謹製のシークレットデッキは素人にはよく分からないので考えても無駄だと思いました

どんな凄いデッキが持ち込まれるのか楽しみです)

 

 

 

前編でも記した通り僕らは色んなデッキをテストし、その全てで失敗した

1度も競技リーグ5-0はなかった

 

藁にもすがる思いで飛びついたのはこのデッキ

デッキリスト | 晴れる屋

グランプリリールでマキス・マツウォカスが22位に入賞した白単タッチ赤ウィニーf:id:tarmo45:20181109013500j:image

 

これをまずは完コピして回した

 

強かった

 

3tべナリア史からの4t英雄的援軍は一瞬で人を殺せる動きだった

サイドから投入される実験の狂乱はこのデッキだと紛うことなきフューチャーサイトだった

何より気に入ったのはそのランドの枚数だ

少し多めにも見える23枚の土地は回してみればすぐに必要なものだと理解出来た

このデッキが事故って負ける時はマナフラッドではなくマナスクリューして負ける

勝つ時はハンド3枚全部土地みたいな場面は良くあったが、土地が3枚で詰まって勝つことは少ない

もうこれにオールインするつもりで白ウィニーを強くするために残された時間を使った

そして完成した75枚がこれだ

 

 

白単ソイヤ

クリーチャー23

不屈の護衛4

空渡りの野心家4

薄暮まといの空渡り3

アダントの先兵4

善意の騎士3

トカートリの儀仗兵1

べナリアの軍司令4

 

呪文14

抗戦1

英雄的援軍4

軍団の上陸3

べナリア史4

イクサランの束縛2

 

土地23

平地14

断崖の避難所4

聖なる鋳造所4

山1

 

サイドボード15

トカートリの儀仗兵2

裁きの一撃2

抗戦1

残骸の漂着1

苦悩火2

一斉検挙1

不可解な終焉1

実験の狂乱2

暴君への敵対者、アジャ二1

黎明をもたらす者ライラ1

採石場1

 

思い入れのあるリストだし、どうせプロツアー始まったら既存のメタゲームなんて全部破壊されると思っているので1枚1枚採用理由を書いていこうと思う

 

不屈の護衛

1マナパワー2

べナリア史とのシナジー、全除去への耐性

特に問題無く4積み

 

空渡りの野心家

1マナパワー2

条件達成で飛行、そして吸血鬼

4枚

 

薄暮まといの空渡り

多分これが一番特徴的

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これ

元々のリストでは癒し手の鷹だった枠

鷹はサイズが上がれば強いのだがインパクトが薄い

何か良い1マナ飛行がいないかと探していた時に見つけた1枚

鷹との違いは飛行ブロッカーが出てきた時

吸血鬼限定とは言え+1/+1パンプは馬鹿にならない

最も真価を発揮するのは相手がドレイクを出してきた時、アダントヴァンガードを突っ込ませることが出来る点

パワー4の破壊不能は本当に止まらない

 

アダントの先兵

環境最強のウィニー

こいつが2tに出るかどうかで勝率が全然違う

4枚

 

善意の騎士

対ゴルガリ、対青黒系に対してある程度安心して繰り出せるクロック

べナリア史とのシナジー

しかし火力で対処してくる相手には大体2/2バニラ

3枚

 

トカートリの儀仗兵

善意の騎士を4枚入れたく無かったので代わりに入った1枚

主にゴルガリ

赤単、青赤フェニックスにもまあまあ効く

インサイドで3枚

 

べナリアの軍司令

このデッキの代名詞的クリーチャー

打点の跳ね上がり方がエグい

自身もナイトなのでべナリア史のバフを貰って殴りに行く

4枚

 

抗戦

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これ

元々栄光の好機だった枠

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栄光の好機自体はとても強い素晴らしいカードだったが、どうしてもデッキの動き的に相手のソーサリーの全除去に対応して打って返し勝てなかったら負け

という動きになりがち

しかし相手のターンにキャストしたら追加ターンは得られないので使いづらさが目立った

よりマイルドに、コンバットトリックとしても使える抗戦に差し替え

クラリオン、2点オールを打ってくる相手に追加するためメインサイドで2枚

 

英雄的援軍

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バグスペル

何故かケツも上がる、ヘイストも付く

3tべナリア史4tダッシュでフルパンするためのデッキと言っても過言ではない

困ったらこれキャストして盤面崩壊願望パンチ

4枚

 

軍団の上陸

ウィニーの嗜み

しかし出てくるトークンは所詮1/1なので重ねて引きたくないため3枚

 

べナリア史

デッキ内の色んなカードとシナジーする中心カード

こういうデッキにおいて1枚でリソースを稼げるカードは偉い

4枚

 

イクサランの束縛

元々のリストでは議事会の裁きだった枠

デッキの動き的に除去してパンチがしたいのに議事会の裁きではそれがぎこちない

殴るためにクリーチャーを横に曲げたいのでそれを邪魔しないイクサランバインドに

※追記

イクサランバインドを採用する理由になっていないというご指摘を頂きました

その通りだと思います

このデッキでは召集してキャストする事を想定していないので、より強力な効果を持っているイクサランバインドを採用しました

2枚

 

土地

このデッキのもう一つの大きな特徴としてランドの枚数がかなり多い

サイドに追加のタップインランドまで入れて全部で24枚の土地を確保

サイド後カロリーの高いカードをキャストするためにも4マナまではストレートに伸ばしたい

ギオンランディングが裏返ることも考えると体感土地25枚くらい

重ねて言うが、このデッキが事故で負ける原因はフラッドではなくスクリュー

 

裁きの一撃

苦手な大型クリーチャーに対して信用できる除去が欲しかった

緑単、ボロスエンジェルに対して

サイド後はランド24赤マナ10なので打てます

 

残骸の漂着

主に上記と同じ

ミラーも意識

最大速度型の青赤フェニックスが増えているかも知れないので増量したいと申し出たが時既に遅く1枚で参加

1枚入ってるだけマシ

 

苦悩火

対コントロール最終兵器

土地いっぱい並べてねじ込む

2枚

 

一斉検挙

苦手な緑単、ボロスエンジェルに対して

青赤フェニックスにもドレイクを吹き飛ばせるため採用

3マナなのが嬉しい 4マナだったら入れてなかったかも

1枚

 

不可解な終焉

裁きの一撃では処理できない野茂み歩きに当てたい

ゴルガリに対してトカートリだけでは不安なので

1枚

 

実験の狂乱

最強のサイドカー

これと英雄的援軍のための赤と言っても過言ではない

極端にマナカーブが前に寄っているこのデッキで貼ればまさに未来予知バリにカードをプレイできる

2枚

 

暴君への敵対者、アジャニ

強い

強いが1枚

別角度の攻め手として絶対に必要なカード

デッキにもマッチしておりリアニもお世話になる

しかし枠が無く1枚に

 

黎明をもたらすも者ライラ

ミラー等で無理やり勝つために

ランド24なので出てほしい、出てくれ

 

採石場

土地の重要性は再三語ったので割愛

ボロスゲートではなく採石場なのは彼が採石場の方が好きだからだ

 

 

この白ウィニーを使い始めてから競技リーグで

4-1

4-1

2-3

4-1

5-0

みたいな感じでほとんど勝ち越すことが出来ました

間違いなく僕らがいじってきたどのデッキよりもぶっちぎりで強いのでオススメです

このデッキのお陰で散々溶かしてきたチケとプレイポイントが激増しました(その後ドラフトの練習で再び溶けました)

 

 

 

 

 

このデッキは弱者のデッキだ

その事はこれを使う上で理解すべきだと思う

自分が出場する大会で、自分が周りよりもある程度上手にプレイできる自信があるならゴルガリミッドレンジなりジェスカイコントロールなり強者のデッキを使う方が良い

このデッキは弱者が強者の足を突いて転ばせて勝つものだ

このデッキは脆い

メタられたら弱い

メインから菌類感染だの2点オールだのバンバン飛んできたりしたら絶対に勝てない

その時は惨敗するだろう

打たれたら負けなスペルがメインから入っているようなメタゲームでそもそもこんなデッキを選ぶやつが悪いのだ

その点を割り切って打たれないにベットした

僕らが欲しいのは一瞬の煌めき

アベレージはいらない

この週末最大瞬間風速を出すためのデッキだ

0か100か

その答えはすぐに出るだろう

 

 

 

 

 

さてここからはプロツアーの予想

……なのだが、その予想が非常に難しい

ラヴニカのギルドのフルスポが出てからスタン擦りまくったけど結局答えはわからなかった

有力なデッキはあるが絶対的なデッキがあるという訳では無い

 

環境をリードするのは間違いなくゴルガリだろう

ゴルガリを中心に”ゴルガリに強いデッキ”、”ゴルガリに強いデッキに対して強いデッキ”、等が持ち込まれるはず

 

全く触れてこなかったが個人的にはセレズニアトークンに期待している

間違いなくポテンシャルは高い

どのデッキにも勝ちうるパワーがある

しかしリストがまだ完成されていないという印象

どこかのチームが、あるいはプレイヤーが本当に強いセレズニアトークンを作ってきたらきっとたくさん勝つと思う

 

またプロチームが持ち込むであろうシークレットデッキも本当に楽しみだ

毎度その完成度の高さに驚かされる

今回のプロツアーでは一体どんな驚きが待っているんだろうか

 

 

 

 

デッキ作成というのはmtgのフィーリングが合う人とやるべきだと言う事を改めて再認識した

僕らは素人がコントロールデッキをプロツアーに持ち込むのは得策ではないという点も早い段階で合致していたし、他の細かい部分についてもそうだ

僕らは2人ともスクリューで負けるのが嫌いだ

反対にフラッドで負けるのは許容できる

スクリューはゲームにならないが、フラッドは受けを作っておけばいくらでもチャンスがある(苦悩火はそのわかりやすい例だ)

だからこそランド24の白ウィニーが完成したと思う

これが、もしどちらかがフラッドで負けるのが嫌いなプレイヤーだった場合こうは行かなかっただろう

 

 

 

 

 

前後編に渡って僕らのスタンダード調整の足跡を記してきた

プロツアー用にデッキを考えたことなど無かったのでとても新鮮で楽しい体験だった

もちろんこのデッキが勝てば嬉しいがそれは二次的なものであってさして重要ではないと僕自身は思っている

(彼が五体満足で日本に帰ってくるというのが最も重要だ。お母さん心配です。)

 

 

”デッキを作る”という作業がこれほど辛く、楽しいものだとは知らなかった

もう一度言うが、このデッキが実際に勝てるかは僕にとっては重要な問題ではない

この75枚は間違いなく僕らが現在作ることが出来る最強の75枚だという確信がある

この75枚に辿り着くまでにたくさんの事を学べた

学びがあった、楽しかったという時点でそれはもう勝ったようなものだ

ラヴニカのギルド発売前より今の方がずっとmtgが好きだし、mtgが上手くなったと思う

それが何より嬉しい

これは勝利より尊く、得難いものだ

 

プロツアーのデッキを作るというのはなかなか無い体験なので機会があればまたチャレンジしたい

 

 

 

 

 

さあ、長い長い文章もこれで終わり

ここからはプロツアーを観戦する時間だ

今頃遠いアトランタの地で途方に暮れているであろう彼にエールを送りつつ、筆を置くことにする