プロツアーラヴニカの献身 調整録


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またこの記事を書ける幸運に心から感謝すると共に、彼の旅の安全を祈ります

 

 

 

 

~あらすじ~

プロツアーラヴニカのギルドに参加する友人とデッキを作ることになった

溶けていくチケ、睡眠時間。もうダメかと思われたその瞬間舞い降りた白い軍団

紆余曲折を経てたどり着いたのは白単t赤ウィニー

初日こそ燻ったものの2日目は爆発して構築部門5連勝

プロツアー初参加にしてチェインを達成したのであった

今回はプロツアーラヴニカの献身のスタンダード調整録です

 

前回の調整録はこちら

ラヴニカのギルド スタンダード調整録 前編 - 「mirage in august」を残し、タイムトラベルする。

ラヴニカのギルド スタンダード調整録 後編 - 「mirage in august」を残し、タイムトラベルする。

 

 

※今回も前回のプロツアーと同様に”コントロールデッキは持ち込まない”という前提でデッキを考えています

 

 

メタゲームの分析をしつつ今回選んだデッキを書いていこうと思います

 

 

スゥルタイミッドレンジ

Sultai Midrange Deck for Magic: the Gathering

前環境の王者、ゴルガリミッドレンジが超強化されて帰ってきました

探検で土地が伸びやすいという特徴とも合致した新たなアドバンテージエンジン、ハイドロイド混成体を中核に据え、正気泥棒や人質取りなどのマルチカラーのパワーカードを採用f:id:tarmo45:20190221221405j:image

かなり凶悪なカード  お値段も凶悪

 

サイドボードには各種カウンターを搭載し隙がありません

Sultai Campaign by NoTempai Deck

更に探検パッケージを抜いてメインから虚報活動や正気泥棒を採用した亜種も登場しました

よりアドバンテージ獲得に特化した構成となっておりこちらも要注目です

 

どちらの構成もカスタマイズ性が高く、どんな相手が来ても五分以上に戦うことができます

選択肢が非常に多いのでプレイ難度も相応に高いですがプロツアーに参加するプレイヤーなら問題なく乗りこなすでしょう

・マリガンに強い

・長期戦に強い

・サイドボードが強い

とプロが好む要素が多く環境最強のミッドレンジとして本戦でも相当数のプレイヤーが持ち込むと予想します

 

 

 

青単テンポ

Mono-Blue Tempo by Kumazemi Deck

ここ最近破竹の勢いで勝ち続けた青単

ラヴニカの献身ではプテラマンダーと本質の把捉の2種を獲得

特にプテラマンダーの加入はとても大きく、このデッキをTier1に押し上げる原動力となりました

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平成の墓忍び デカい

 

前環境までは高い打点を出せるクリーチャーが大嵐のジンしかいませんでしたが、打点に関する問題は解消されました

このデッキの恐ろしい所はそのブン回りにあります

1t目にクロック設置、2t目に執着的探訪エンチャントからのピアス潜水カンスペで守りきる

という動きは全てのデッキに対して有効であり、ほぼ止めることができません

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マヂ無理…ʚ😇ɞ

 

この動きはもはやコンボと言っても良く”2tキル”とも言うべき理不尽さです(僕は本当はこのデッキをコンボに分類したいくらいだ)

例え相手が何であろうと先行ブンで勝てるというのはそれだけでデッキを選ぶ理由に値すると考えます

しかしブンの動きが出来なかった場合使用者の腕が如実に出るデッキです

また一度崩されると立て直しが難しいピーキーなデッキであるとも言えるでしょう

 

・環境最強のブン回り

・カウンターを多く採用しているので特定のデッキに対して強い

・プロが好むクロックパーミッション

・スゥルタイミッドレンジに対しても有利に試合を運ぶことができる

以上の3点より青単を選ぶプレイヤーはかなり多いと予想します

 

このふたつのデッキが使用率で上位に来ると予想します

同型を意識していないスゥルタイと青単、またはスゥルタイと青単どちらにも不利なデッキは持ち込むべきではないでしょう

 

 

 

アゾリウスアグロ

Azorius Aggro by Julian John Deck

プロツアーラヴニカのギルドを制した白ウィニーが新拡張で手に入れたのは徴税人と不敗の陣形の2枚

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サリアちゃん(男) 複数並ぶとかなりウザイf:id:tarmo45:20190221222021j:image

英語名:Unbreakable Formation カッケエ…

 

徴税人は流行りの青単に対して強烈なアンチカードになります

死んでもスピリットが出るのはお得

不敗の陣形はベナリア軍司令、敬慕されるロクソドンに続く3種類目のロードです

スペルなので単純な比較は出来ませんが2種に勝るとも劣らない恐るべき突破力を持っています

メインでキャストしたならば警戒破壊不能なので完全に殴り得

横に並べて適当にブッパするだけで相手の盤面が吹き飛びます

特にクリーチャーを並べ合うデッキ同士で決め手になりうるスペルです

多くの大会で優秀な成績を残している注目のアーキタイプです

 

・ブン回りが強い

・特定の対策カードを引かないと厳しい戦いになる

前回のプロツアーではゴルガリが同型を意識しすぎるあまりデッキがどんどん重くなり、白ウィニーに足元を掬われる形となりましたが、今回はどうなるのでしょうか

・回らないと弱い

・特定の対策カードに非常に弱い

など懸念材料は少なくありません

しかし徴税人が出ると青単に強いこと、相手がなんであってもブンで押し切れることを考えると3~5番人気の使用率になると予想します

 

 

 

エスパーコントロール

Esper Control by nagi_magic Deck

この環境のコントロールデッキの代表格です

ラヴニカの献身で吸収と4マナのラスゴ、屈辱を獲得しました

大正義テフェリー擁するエスパーはまさに鉄壁……と言いたい所ですが、このデッキめちゃくちゃマナ基盤が弱いです

吸収とケイヤの怒りを同時に採用するのはとても正気とは思えません

ショックランドを固めて引く、チェックランドを固めて引く、青青が出ない、4tにラスが打てない

などとにかくマナでの事故が付きまといます

市川ユウキプロの言を借りるならば”回ったら上振れ”です

 

・優秀な除去、カウンター、4マナ全体除去

・大正義テフェリー

・貧弱なマナ基盤

最近定番になった正気泥棒と人質取りをサイドインするプランはネタバレしてしまった今はかつてほど有効ではないように思えます

とはいえ依然テフェリーは強力です

プロはこのデッキにどう答えを出したのでしょうか

 

 

 

赤単アグロ

Mono-Red Aggro by Volkernick, Eric Deck

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舞台照らしという新たなアドバンテージソースを獲得した赤単もメタゲームの一角を占めるでしょう

流行りの青単に対しても鎖回しは有効です

相手がどんなデッキであろうと焼き尽くすパワーを赤単は持っています

 

 

 

鎖回しを使ったミッドレンジ

GPメンフィス2019(スタンダード):優勝はラクドスミッドレンジを使用したJody Keith選手 | イゼ速。:Izzet MTG News Flash

鎖回しを使ったミッドレンジも2つ紹介しておくべきかもしれません

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このカード強すぎないか?

 

ラクドスとグルールはグランプリで結果を残しました

これらのデッキは鎖回しで小さなクリーチャーを吹き飛ばしつつ地上を固めて再燃するフェニックスで殴るというプランで共通しています

プロツアーでも一定数持ち込まれると予想します

 

イゼットドレイク

Izzet Drakes by Ssejemba Deck

環境初期に流行ったこのデッキは実際には強いのでしょうか?

現在ネットで多く見るタイプのものは弱いと考えています

理論上青単に強い、スゥルタイも悪くない、ネクサスもカウンターでなんとか

と言われると最強じゃん!と言いたくなりますが、ここ最近はその期待に見合う結果を残せていません

良いフィールドのはずなのにイゼットドレイクは何故勝ちきれていないのでしょう?

確かなことはわかりませんが、僕はそもそもデッキが弱いのではないかと考えています

いくつか理由が考えられますが、そのひとつにデッキそのものの脆さがあるのではないかと思います

このデッキは本当にクリーチャー12枚で足りているのでしょうか?

これでは2,3体除去されると後続が尽きていつまでも勝てない

こんな状況が発生します

たくさん生物を引けた時は調子よく勝てるけれど引けなくなった時に脆いです

こういった構造上の脆さが長丁場になるグランプリでは如実に現れてしまい勝ちきれないのではないでしょうか

従ってプロツアーでも一定数持ち込む人はいると思われますが、一大勢力にはならないと予想します

 

 

ゲート

まだリストが固まっていないランプデッキです

研究途上ですがポテンシャルはありそうです

デッキの性質上どうしてもタップイン祭りの事故が発生するので安定性では今一つですが選択肢が非常に多いのが魅力

しかし既存のデッキリストではプロツアーに持ち込むだけの理由があるようには思えません

ブレイクスルーが起きると環境を席巻するかもしれませんが基本的には当たらないものと予想します

 

 

エスパー、バントミッドレンジ

エスパーは第1管区の勇士を使ったものや民兵のラッパ手を採用したものが開発されています

バントは成長室の守護者やエリマキ神秘家、恩寵の天使を採用したフラッシュ型が多く見られます

どれも良いデッキではあるのですが、スゥルタイとの差別化が難しい問題です

鎖回しや再燃するフェニックスのようなインパクトのあるカードが少ないため下位互換になりやすく、相手の裏をかく使い方以外難しいと言わざるを得ません

現状ではスゥルタイとの明確な差別化になるようなブレイクスルー待ちの状態です

プロツアーではミッドレンジを使うなら素直に鎖回しかスゥルタイを選ぶプレイヤーが多いと予想します

 

 

シミックネクサス

Simic Nexus by Kenta Harane Deck

問題のこのデッキ

荒野の再生を使った発展/発破を使ったタイプのデッキもここに含みます

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荒野の再生かこれどっちか禁止して♡

 

先日行われたグランプリメンフィスではどのデッキが進化して1歩先を行くかを注目していましたが、既存のデッキの多くは流行りの構成であり特に目新しいものはありませんでした

しかしシミックネクサスだけは誰の目にも明らかにブレイクスルーを起こしていました

特に目を引くのはそのサイドボードです

アゾカンアーチャーの他にウーズも採用、更にはマナクリが5枚、計10枚のクリーチャーがサイドボードに仕込まれています

このデッキで原根健太選手はスイスラウンドで13連勝という凄まじい成績でtop8に入っています

市川ユウキ選手もサイドボードが数枚違うシミックネクサスで20位に入っています

チーム武蔵はシミックネクサスを中心に研究していると見て間違いないでしょう

他のプロチームも荒野の再生デッキを研究している可能性は充分にあります

 

・環境屈指の理不尽なコンボデッキ

・サイドボード後を含めるとさらに難解

・荒野の再生デッキ自体の情報が少ない

 

環境を代表するコンボデッキです

荒野の再生を設置してアズカンタが裏返ったらほぼ無限ターンが決まると見て間違いありません

体感ですがアズカンタが裏返るまでがタイムリミットでしょう

単純なビートダウンではフォグで躱されて時間を稼がれてしまうので非常に相性が悪いです

 

もちろん私達もこのデッキに頭を悩まされ、常に対策を考えさせられてきました

しかし困ったことにグランプリメンフィスが近づくにつれマッチする回数が減っていき、終わってからはネクサスデッキをMO競技リーグで見かけることがなくなってしまったのです 

たまたまかもしれませんが、最後の方は30マッチ以上やって1度も見なくなってしまうという異常事態に

恐らくですが、ネクサスを調整しているチームがMO競技リーグに潜ることをやめてしまったのだと考えています

プロツアーで使う可能性のあるデッキをわざわざオンラインで回す必要はありません

彼らには優秀なチームメイトがいるはずですからね

これが私たちのただの思いすごしであり、杞憂に終わることを本当に心から望んでいます

そんなわけでこのデッキに関しては本当に情報がありません

特にサイドボード後はほぼ何もわかりません

原根健太選手のリストもサイドプランが全くわかりません

グランプリメンフィスのネット中継も無かったのは本当に勘弁してくれと泣きそうになりました

ネクサスを現地で観戦できるプロとアマの差を最も感じた瞬間です

 

このデッキはたぶん強いです

メインボードの強さはアリーナのBo1で禁止されたことからもわかる通りです

プロチームが本気でサイドボードを作りこんだらどうなるのか検討もつきません

実力が未知数なデッキなのですが意識せざるを得ませんでした

このデッキの存在が今回調整が難航した原因でもあります

どこまでガードを上げるのか?そもそも何が効くのか?思い切って切るべきか?

とても難しい問題です

そして前述の通り情報がありません

みんな弱いことに気付いて回すのをやめた飽きたそんな結論が出ていることを祈ります

従って使用率も予想できません

 

 

 

 

 

デッキの使用率ではスゥルタイと青単がtop2と予想

その下に白単、赤単、エスパーなど

ネクサスは正直わかりません

スゥルタイ青単とシェアを分け合う一大勢力となるか極一部のコンボ好きが持ち込むだけか蓋を開けてみないとわかりません

 

 

 

 

今回選んだデッキはこちら

セレズニアトーク

《土地21》

平地 9

森 4

寺院の庭 4

陽花弁の木立ち 4

 

《クリーチャー17》

徴税人 4

成長室の守護者 4

協約の魂、イマーラ 3

敬慕されるロクソドン 3

不和のトロスターニ 3

 

《インスタント、ソーサリー9》

開花/華麗 4

不敗の陣形 3

大集団の行進 2

 

《エンチャント11》

軍団の上陸 3

ベナリア史 4

議事会の裁き 4

 

《プレインズウォーカー2》

暴君への敵対者、アジャニ2

 

 

《サイドボード15》

アダントの尖兵 3

不可解な終焉 3

暴君への敵対者、アジャニ 1

クロールの銛撃ち 4

押し潰す梢 2

打ち壊すブロントドン2

 

 

 

このデッキは前環境でゴルガリの採取/最終に弱いという弱点を露呈させてしまいました

しかし今のスゥルタイは採取/最終の枚数がかなり減ってきています

ゴルガリの時はメインに4枚確定だったものが今では入ってて3枚

2枚のリストも珍しくありません

ミラーが頻繁するクリーチャー重視の環境では強いカードでしたが、荒野の再生デッキや青単がいると予想されるならかなり弱い部類のカードです

とにかく採取/最終がきついデッキだったので枚数が減ってきているのは好機です

全体除去さえ打たれないならスゥルタイともいい勝負ができます

アジャニで盤面を強化していく戦法も非常に有効です

 

 

青単とのメインは基本的には先手ゲーです

が、徴税人がかなり刺さるマッチなので引けることを祈ります

青単は本戦でも相当数いることが予想されるのでサイドボードは青単を狙い撃ちする構成にしています

クロールの銛撃ちを殺意の4積み押し潰す梢も2枚

サイド後は徴税人とクロールという切り札を2種8枚持つこちらが有利なゲームになります

 

 

その他のマッチアップですが極端に不利なマッチはネクサスくらいです

もし当たってしまったら押し潰す梢を握り締めてクソビートするのみです

雑多なビートダウン全般白単や赤単等に対して有利に振る舞えるのがこのデッキの強みです

多くの対ビートダウンのマッチでサイドボード込みなら五分~有利に収まっていると思います

ギリギリまでアゾリウスアグロとどちらを使うか悩んでいましたが、回らなかった時の弱さがどうしても許容できず最終的にセレズニアに決まりました

対ネクサスを考えるならカウンターを積めるアゾリウスに軍配が上がるのですが、そもそもカウンターをキャストできるか怪しいマナ基盤も足を引っ張りました

マリガンにも致命的に弱いです

 

今回セレズニアトークンで目指すのは初日を4勝4敗以上で終えて2日目に進出することです

このデッキなら不可能な目標ではないと信じています

 

 

 

 

あとがき(読み飛ばしておけまる)

前回のプロツアーでは正解デッキを引き当てる事に成功し、友人の豪運も味方して勝つことが出来ましたが今回もそうなるかはわかりません

”調整とは運ゲーである”とは渡辺雄也選手の言葉です

あの日見たクソデッキの名前を僕達はまだ知らない。 vol.2 PTパリ11 -青黒テゼレット- | 記事

自分たちがどれだけ考えても実際のメタゲームがそこで止まるかはわかりません

しかし考えることをやめたら絶対に勝てないと思います

yuta_takahashi on Twitter: "長年「カードゲームの強さとは何か」考え続けて来たが、最近ようやく答えに近づきつつある。 →相手よりも多く考えられる事。 ハビエルは熱心に研究するし、自分の得手不得手も知っている。 面白かった。… "

分からなくても想像する、考えることで何かが生まれると僕は信じています

 

今回はスゥルタイ青単と予想しましたが実際には”スゥルタイ青単に強い”全く違うデッキが流行るかもしれません

更には”スゥルタイ青単に強いデッキに強いデッキ”までメタゲームは進んでいるかもしれません(もしかしたらネクサスに強いデッキに強いデッキ、みたいなことになってるかもしれませんね。

前回のプロツアーでは白単に強い白単が勝ち組デッキになりました)

どこで止まるか、というのは重要なテーマなのですが今回はネクサスという未知数なデッキの存在が邪魔で邪魔で仕方ありませんでした

どのような結果になるか1プレイヤーとしてとても楽しみです

 

 

 

 

 

 

 

僕が心から愛している映画、パシフィックリムの1番好きなセリフを残して今回は終わろうと思います

 

『勇気は幸運をもたらす』

                               ―生物学者 ニュートン・ガイズラー